医療費控除の対象になるもの・ならないもの
医療費控除の対象となる医療費は、「治療」のための費用。つまり、医師等による診療や治療のために支払った医療費や器具購入費に限られます。医師による診療であっても、美容や健康維持のためのものは対象外です。
と言ってもわかりにくいかもしれないので、もうちょっと具体的に、どういう場合が対象になるのかを挙げていきます。
目次
通院したとき
通院した場合の基本的な診療代はもちろん医療費控除の対象になります。以下、判断の難しい事例について「対象になるもの」と「対象にならないもの」に分類します。
医療費控除の対象になるもの
- インプラントブリッジとインプラント入れ歯の治療費(歯科ローンやクレジットを利用した場合は、そのローン契約が成立した年に全額対象。ただし金利、手数料は対象外)
- 金やポーセレンを使用した歯の治療費
- 歯列の矯正費用(発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合に限る)
- マッサージ代やハリ代(健康維持のものは対象外)
- カイロプラクティックの費用
- 視力回復レーザー手術(レーシック手術)の費用
- オルソケラトロジー(角膜矯正療法)による近視治療の費用
- 通院費(交通機関を利用した場合に限る。タクシー代はやむを得ない場合に限る)
- 1人で通院が困難な場合の付添人の交通費
- 医師送迎費用
- 海外で支払った医療費
医療費控除の対象にならないもの
- ホクロの除去費用
- 自家用車で通院する場合のガソリン代、駐車代
- 転地療養のための費用
- 湯治の費用
- エステ費用
- 脱毛症のための育毛費用
入院したとき
医療費控除の対象になるもの
- 通常の診療代、部屋代
- 医師が必要と判断した場合の差額ベッド代
- 病院で支給される食事代
- 診療に必要とされる氷枕や氷のうの購入費用
- 病院が用意したシーツ等のクリーニング代
- 付添人を頼んだときの付添料、食事代
- 家政婦紹介所に支払う付添人の紹介手数料
- 遠隔地の病院でなければ治療ができないと主治医が判断した場合の遠隔地の病院への旅費
医療費控除の対象にならないもの
- 入院する際に必要な寝巻きや洗面具などの身の回り品の購入費用
- 医師や看護師に対するお礼
- 本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッド代
- 付添人を頼んだときの付添人への所定の料金以外の心付け
- 親族などに付添料の名目で支払った付添料、食事代、旅費
- 病院で支給される食事以外の出前や外食
- 自身のパジャマ等のクリーニング代
- 病室で使用するテレビや冷蔵庫の賃貸料や電気料
- 個人都合による帰宅旅費
- 診断書作成費用
妊娠・出産・不妊治療をしたとき
入院した場合と変わりませんが、妊娠、出産等に関係する費用については以下の通りです。
医療費控除の対象になるもの
- 妊娠と診断されてからの定期検診、検査費用
- 通院費用(領収書のない場合は家計簿等に記録)
- 分娩費用
- 出産で入院する場合の緊急時のタクシー代
- 入院する際に必要な寝巻きや洗面具などの身の回り品の購入費用
- 助産師による分娩介助料
- 助産師による保健指導料
- 出産後の定期検診、検査(健康診断にすぎないものを除く)
- 不妊症の治療費及び人工授精の費用
- 妊娠中絶費用のうち、母体保護法の規定に基づいて医師が行う妊娠中絶費用
医療費控除の対象にならないもの
- 実家で出産するために帰省する場合の交通費
- 無痛分娩講座の受講費用
- 出産後、子供の世話や家事をしてもらうための家政婦への費用
介護をしたとき・受けたとき
介護施設等の医療費控除対象額の算定は大変複雑です。しかし施設等の領収書には医療費控除の対象となる金額が記載されていますので、そちらを参考にした方がよいでしょう。
介護保険制度下での施設サービス
1.指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)指定地域密着型介護老人福祉施設
医療費控除の対象になるもの
- 施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額の2分の1に相当する金額
- おむつ代の自己負担額のみ(介護保険給付の対象となるため)
医療費控除の対象にならないもの
- 日常生活費、特別なサービス費用(日常生活費とは、理美容代やその他施設サービス等において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものの費用で、その入所者に負担させることが適当と認められるもの)
2.介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設(療養型病床群等)
医療費控除の対象になるもの
- 施設サービスの対価(介護費、食費及び居住費)として支払った額
- 診療、治療のために必要な介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設の個室等の特別室の使用料
医療費控除の対象にならないもの
- 日常生活費、特別なサービス費用
居宅サービス
医療費控除の対象になるもの
- 訪問看護
- 介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)
- 介護予防居宅療養管理指導
- 通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)
- 介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所療養介護(ショートステイ)
- 介護予防短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
- 複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)
- 交通費のうち、通所リハビリテーションや短期入所療養介護を受けるため、介護老人保健施設や指定介護療養型医療施設へ通う際に支払う費用で、通常必要なもの
- 下記2の居宅サービス(上記1の居宅サービスと併せて利用しない場合に限る)または3の居宅サービスにおいて行われる介護福祉士等による喀痰吸引等の対価(居宅サービスの対価として支払った額の10分の1に相当する金額)
上記の居宅サービスと併せて利用する場合のみ医療費控除の対象となる居宅サービス
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)(生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除く)
- 夜間対応型訪問介護
- 介護予防訪問介護
- 訪問入浴介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 介護予防通所介護
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 介護予防短期入所生活介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る)
- 複合型サービス(上記の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)
医療費控除の対象とならないもの
- 訪問介護(生活援助中心型)
- 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
- 介護予防認知症対応型共同生活介護
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 介護予防特定施設入居者生活介護
- 福祉用具貸与
- 介護予防福祉用具貸与
- 複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)
薬や医療器具を購入したとき
薬や医療器具は治療を目的としたものについてのみ医療費控除の対象となります。薬局で購入した場合にはレシートに薬の種類や内容をメモ書きしておきましょう。
医療費控除の対象となるもの
- 薬局等で市販されている風邪薬
- 漢方薬やビタミン剤(医薬品であり、かつ、治療等に必要なもの)
- 糖尿病治療のためのインシュリン注射器の購入費用
- 眼鏡の購入費用(斜視、白内障、緑内障などで手術後の機能回復のため短期間装用するものや、幼児の未発達視力を向上させるために装着を要するための眼鏡などで、治療のために必要な眼鏡として医師の指示で装用するものに限る)
- 松葉づえ、補聴器、義手義足、血圧計等の医療器具(医師の指示のもとに購入したものに限る)
- ストマ用装具の購入費用(医師の発行した「ストマ用装具使用証明書」が必要)
- おむつ代(傷病によりおおむね6ヶ月以上寝たきりの人で医師の治療を受けている場合に限る。医師の発行した「おむつ使用証明書」が必要)
- 人工透析器の購入費用
- ニコチンパッチ等の購入費用(医師の指示のもとに購入したものに限る)
医療費控除の対象とならないもの
- 漢方薬やビタミン剤、ドリンク剤(疲労回復や健康維持の目的のもの)
- 育毛剤の購入費用
- 食事療法に基づく食品の購入費用
- 防ダニ寝具、空気清浄機の購入費用
- 眼鏡の購入費用(近視や遠視の矯正のもの)
健康診断や予防接種をしたとき
医療費控除の対象になるもの
- 型肝炎ワクチンの接種費用(予防注射は対象外)
- 丸山ワクチンの購入費用
- メタボリックシンドローム健診の結果、高血圧症等と同等の状態であると認められた者に対して行われる特定保健指導料(運動施設の利用料は対象外)
- 温泉利用型健康増進施設の利用代金(温泉療養証明書が必要)
医療費控除の対象にならないもの
- インフルエンザ等の予防接種
- 人間ドックの費用(ただし、ドックの結果重大な疾病が発見され、引き続きその治療を行った場合には対象となる)
- エイズ検査の費用