フリーマーケットでハンドメイドの商品を売ってみた。仕訳や利益計算は?

急激に成長しているハンドメイド市場

ハンドメイドブームやフリマアプリの普及から急激に拡大してきているハンドメイド市場。主婦が空いた時間にお小遣い稼ぎとして販売しているケースもよく見られます。

通常、販売する、ということは商品の仕入れ価格と販売価格があり、売れた場合に販売価格から仕入れ価格が差し引かれた分が利益となります。請求書や領収書で売上金の授受を明確にします。

ハンドメイドサイトやフリマアプリでの販売は売上金の明細書が発行できるものもありますが、ネットオークションや対面販売のフリーマーケットなどは大半が証明書なしの取引になってしまいます。この場合、帳簿に取引を転記するにはどのような手順を踏むべきでしょうか?

 

アプリやサイトで売上明細書を発行できる場合

 売上明細書を発行できるサイトなどで売り上げた場合は、月別または商品別に売上明細書をプリントアウトしておきましょう。PCにファイルとして保存しておくだけでも良いですが、確定申告をする場合関連書類は原則文書として保存しておかなければならないという決まりがあります。今ファイルとして保存しておいて申告の際にプリントアウトするのもいいですが、二度手間が嫌であれば初めから印刷してまとめて保管しておく方がいいでしょう。申告書類を作る際にもPCのウィンドウをたくさん開くよりは手元の書類を参考にして入力する方が早いこともあります。

また、ネット上で売り上げたものはたいてい入金の際に販売手数料や振込手数料がかかります。売上明細書に手数料も明記されていればそのまま帳簿に転記すればよいですが、純粋に売り上げた金額だけを記載しているものもあるので注意が必要になります。売上明細書と口座の振込額に違いがある場合、差し引かれた販売手数料や振込手数料を振替伝票や預金出納帳に記載し、その手数料が差し引かれた取引を明確にしなければなりません。

売上金と入金額を確認して、間違いのない記帳をしましょう。

 

レシートや売上明細を発行しない取引の場合

地域のフリーマーケットやイベントに出店すると、自分でレジなどを用意していかない限りレシートなどを発行しない現金取引になります。いちいち手書きの領収書を書いていてはお客様を待たせることにもなり手間もかかるので、ほとんどの出店者はレシートなしで販売していると思います。売上の計算方法も、閉店時の所持金額から釣銭として用意していた金額を引く方、商品一つ一つにタグをつけ商品管理をして売れたものの金額と所持金を照らし合わせる方など、数パターンあるでしょう。地域のフリーマーケットなどは値引きされることもあるので、まとめて釣銭額を引いた漠然とした売上金として把握する方が簡単でしょうか。

どちらの場合でも、現金取引でレシートは出なくても売上金の発生する取引をしています。この場合は、ネット販売時の販売等手数料と同じく振替伝票または現金出納帳に記帳します。「売上金○○/現金○○ 内訳:(イベント名)売上金」としておけば問題なく処理できます。売り上げた商品ごとの記帳もできますが、手間との闘いになるかと思います。同日の同一イベントでの売り上げの場合は合算しても問題ないですが、2日間などにわたって開催されるイベントでは1日目・2日目とわけて記帳した方がよいでしょう。最終日にまとめて計上する場合は、出店料なども同一イベントでまとめて計上する方が見た感じの違和感がなくなります。月またぎのイベントなどでは分けて記帳すると、会計ソフトなどの月次計算の売上や利益推移に反映されます。

申告の際の決まり事としては、提出の義務はないので振替伝票は必ずしも必要というわけではありません。会計ソフトも振替伝票に入力しても、結局は現金取引ですので現金出納帳に転記されます。注意点としては、書類のない取引ですので、金額が曖昧にならないように販売するもの・売れたものをしっかりとチェックできる体制で販売するというところでしょうか。どんぶり勘定は極力避けましょう。

 

ハンドメイド販売の利益計算と棚卸資産

その時その時の売上については先に述べた方法で記帳し、それぞれに利益計算できるかと思います。しかし、ハンドメイドで商品を作るとき、商品一つ分だけの仕入れというものはなかなかできないものです。資材の販売単位の関係や端材が出たりするなど、使った資材と残った資材とが出来てしまいます。大ロットで仕入すると価格も少なくて済む資材が多いので、資材はまとめ買いするという方も多いはずです。では、商品一つ一つの利益を計算するには、使用した資材一つ一つ数えて計算しなければならないのでしょうか。使用した資材の量が明確にできるものでは可能ですが、ミシン糸を何メートル使ったか、などはそうそう計算する物好きはいないでしょう。

確定申告をする際、決算書を作成するときに「棚卸表」というものを作ります。これは、決算期末に残っている資材や商品を翌年度の「資産」(売上に成り得るもの)として計上するものです。だいたい「仕入価格÷仕入個数×残っている数」でその金額を計算します。一つずつの仕入れ価格や販売価格が明確な小売業などは数えて計算するだけの単純作業(手間はかかりますが)になりますが、製造販売の場合はさらに手間が掛かります。基本的な計算手順は変わらないのですが、使用する資材が細かかったり大量だったりと数えるのに手間が掛かるものが多いものです。

さて、この「棚卸資産」ですが利益計算にどう影響してくるかというと、これがなかなか重要な立ち位置を持っています。

「利益=売上額―仕入額」です。一つ一つの商品の利益計算はこれでできますが、事業全体としての利益計算は「利益=売上額―仕入れや費用」となります。商品別の利益計算だけでは期末に合算したときに誤差が生じます。また、仕入れた資材が残っているのにすべて使用したとして費用計上してしまうと利益額が少なくなってしまいます。ですので、残っている資材や商品は「資産」として仮置きし、実際に使用した資材量をはっきりさせることで利益計算に狂いが生じないようになっているのです。ここで製造販売の純粋な利益額が初めて出てくることになります。

また、この「棚卸資産」は翌年度に持ち越します。今年度使った資材を翌年度使用しない事業はほとんどないでしょうから、「前年度の仕入れで今年度売上になり得る資産」として「期首棚卸資産」を新年度に引き継ぎます。会計ソフトでは該当年度の決算書ができていればデータを新年度に繰り越すだけで自動で計上されますので、ほぼ間違うことはないでしょう。

期末に「棚卸資産」を計上して初めて、事業としての正しい利益計算が完成するといっても過言ではありません。副業とはいえ、申告が可能なほどの売上があるのであれば棚卸をすることによって利益計算だけでなく資材の不足や無駄が見えてきたりします。

手軽に始められるハンドメイドの副業ですが、申告する際は商品を作る以上に細かい作業があるかもしれませんね。

takuto

takuto現役・独立系ファイナンシャルプランナー

投稿者プロフィール

大学卒業後、地元のハウスメーカーに就職。3年後、ファイナンシャルプランナーに転向。
携帯料金の見直しから、相続の相談まで幅広くメリットを出すうちに、紹介が紹介を呼び、多いときで月に100件以上の打ち合わせを行うことも。
「知らずに損しているを無くす」をモットーに、ライフプランをもとにした貯金の考え方や節約術、お金の管理運用などのアドバイスを行っている。

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