個人事業主に年末調整は必要?源泉徴収と確定申告
年末調整は会社の行う経理処理
毎年12月に入るとよく聞く「年末調整」。なんとなく税金が戻ってきてお得なイメージがありませんか?これは、一年分の見込み年収から所得税をあらかじめ差し引いて居t、その差し引いた分を実際の年収に照らし合わせて過不足を清算するものです。その結果、税金を払い過ぎていたら還付金として戻ってきますし、不足があれば改めて徴収されます。不足の場合は給与から天引きになることが多く、還付金の場合はプラスされて給与が支払われるので増えているときに年末調整を意識することが多いでしょう。
しかし、この年末調整は個人事業主には必要あるのでしょうか?個人事業主と年末調整の関係は、簡単なようで少し複雑です。なぜなら、個人事業主は年末調整をしてもらう側にもしてあげる側にもなり得るからです。
「年末調整」は個人で行う確定申告と違い、会社が「給与」として支払った分に行う作業です。ですので、会社に勤めていれば会社から支払われた分の給与については会社が年末調整をかけてくれます。しかし、完全自営でやっている、会社から給与をもらっていない個人事業主であれば年末調整は関係ありません。次年度の税額は確定申告の所得申告によって決まり、その所得申告の額によっては年末調整と同じく所得税の還付金や不足額の徴収がされます。ここまでは、個人事業主に年末調整は気に留めなくて良いもののような説明ですが、その先があります。年末調整は、給与から所得税(源泉所得税)を差し引いている場合に行います。会社から給与をもらっている個人事業主、つまり副業で事業主をしている方には必要なものとなってきます。また、事業主として従業員を雇い、従業員の給与から所得税(源泉所得税)を天引きしてまとめて納めている給与形態をとっていれば従業員分の年末調整が必要になります。個人事業で年末調整処理が必要になるケースはそう多くはないと思いますが、この従業員は専従者給与以外の従業員は労働時間に関わらず関係してくるものなので頭に入れておいて損はないでしょう。もっとも、そこまで事業規模が大きくなれば株式成りなど法人格にされた方が楽な場合が多いのですが。
源泉徴収されていれば確定申告は必要ない?
さて、前項で年末調整は会社からの所得に対するものと説明しました。つまり、給与にかかる所得税は会社が天引きで払ってくれていて、過不足があれば年末調整で済む話ですが、そこに任せっきりでいいものでしょうか?
実はこの年末調整は必要最低限のものでしかなく、その仕方によっては損をしている場合もあります。大方の企業は税理士を通じてきちんと処理されていますが、中にはそうでない企業もあります。たとえば生命保険控除や扶養控除。扶養控除は知っている方は多いとは思いますが、扶養家族がいる場合に税金が優遇されます。おおかた社会保険に入っていれば、保険証の発行の際家族分も申請するので間違うことはほとんどないと思うのですが、この扶養控除の有無や人数が間違っていると税金をだいぶ多く支払います。逆に家族が扶養を外れたのに扶養人数に入っていれば最悪虚偽申告になります。源泉徴収票の「扶養の有無」の欄を確認しましょう。
また、生命保険料控除は毎年11月から12月の間に保険会社から送られてくる「年間支払保険料のお知らせ」などの書類を提出しなければ控除してもらえません。なぜなら、一年間に支払った保険料の金額や種類によって控除額が変わってくるからです。時折この生命保険控除がされていなかった、という年末調整の話を聞きます。書類を提出し忘れたのか企業側がミスをしたのかは定かではありませんが、その場合あとから控除を申請することになります。源泉徴収票と生命保険料の支払総額が記載された書類ともに確定申告をすれば年末調整でなくても生命保険料控除は可能です。
ほかにも医療費控除や住宅ローン控除の必要があれば、会社で年末調整をしてもらっていても確定申告の必要が出てきます。
還付金の有無やその金額にしか目がいかないことが多い年末調整ですが、場合によってはそれ以上の還付金を含んでいる場合があるので、源泉徴収票の内容はしっかりと確認しましょう。
副業ならば源泉徴収票が必要
また、給与所得以外に副業として申告対象になる所得がある方は源泉徴収票の添付は必須となります。なぜなら所得税は所得の発生する場所ごとではなく個人の総所得によって税額が決まるからです。これは不労所得や不動産所得も含まれます。すべての年間所得を合算したものから所得税額を算出するので、年間に給与所得以外の所得が20万円以上になるのに申告を怠ると脱税とみなされます。追徴課税の対象になることがありますので、副業の収入もきちんと把握して確定申告の必要があるかどうかを確認しなければなりません。
事業所得がある場合、事業の経営状況が赤字であれば給与所得よりも総所得が下がることになり、税額も減る場合があります。しかし、近年その手段で脱税しようとする事由が多数発生しており、税務署も何かと目を光らせています。節税と脱税は別物ですので、故意に赤字を計上しないでください。
また、個人事業主として認める条件は、その事業に専念していることが第一条件です。給与の金額と事業所得の割合によっては青色申告等の認定を取り消される場合もあるようです。どのラインから、とは一概に言えないのですが、たとえば職業欄に「自営業」と書くのに会社からの給与が正社員並みですと実際の職業は「サラリーマン」ではないか、またはその逆もあります。事業内容、つまり職業によって所得税の税率が変わってくることもあるので、副業をしている会社員の確定申告は少し厳しい目で見られるという近年のお役所事情があるようです。本業と副業の線引きは自分の中で決めておく方がいいでしょう。
確定申告が必要な方には、帳簿が如何に重要かは理解いただけていると思います。会社員の帳簿にあたるものは「給与明細」と「源泉徴収票」です。副業の帳簿や申告書と同じ目で給与明細や源泉徴収票を見ると、今まで見逃していた節税ポイントが見つかることもあります。お金に関する書類はしっかりと理解しておくのが賢いやり方と言えるでしょう。