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これって経費?家族のアルバイト代は?「専従者給与」とは?
急な人手に手伝ってもらったらけど…
予想外に忙しく、だけど限定的で従業員を雇うまでもない場合、個人事業主の多くは家族に手伝ってもらうかと思います。その際にかかった人件費・アルバイト代は人件費として経費計上できるのでしょうか?
青色申告の人件費について詳しく見てみましょう。
「専従者給与」とは
青色申告には「専従者給与」というものがあります。これは「事業主と生計を一にするもので、年齢15歳以上かつ原則年間6カ月以上青色申告の事業に専念していること」を条件に、その給与分を経費として計上することができる制度です。
よくご夫婦で事業をされている方は、奥様を「青色事業専従者」として給与を経費計上なさることが多いかと思います。
ここで注意すべき点は「専従者」という言葉です。「専従者」とは「専ら事業に従事する者」、この場合であれば、「原則年間6カ月以上青色事業に専念している者」となります。
つまり、ご夫婦であれば奥様が正社員で働いているかたわらご主人のお仕事を手伝う、という場合は年間6カ月以上手伝っていたとしても「専念している」ことにはなりませんので、こちらのケースは「専従者」から外れてしまいます。
この場合アルバイト代を出すとすれば、残念ながらご主人のポケットマネーからとなってしまいます。
同様に、高校生の息子に夏休みの間だけ手伝ってもらった、という場合も、学生は学業が本職ですので「専従者」にはあたりません。
「アルバイト代」ではなく「親からのお駄賃」ということです。しかし、二部学生になると、日中などに年間6カ月以上事業に専念できる時間があれば認められる場合もあります。
二部学生は「働きながら学校に通うことができる」学生であるからです。
「家族に手伝ってもらったけど、期間が微妙で計上していいか不安だ」という場合は、申告書類を作成する前に税務署などに問い合わせてみるのが確実ですね。
「専従者給与」の注意点
「専従者給与」は、家族に仕事を手伝ってもらってなおかつ経費計上にて節税できる有難い制度です。うまく使って払うべき税金を少しでも減らしておきたいところです。ですが、気を付けなければならない点もいくつかあります。
まず「専従者」になるためには「青色事業専従者給与に関する届出書」を管轄の税務署に届け出なければなりません。
この届出をせずに申告書の「専従者給与」の欄に給与額を記載しても受け付けてもらえません。
この「青色事業専従者給与に関する届出書」には「仕事の程度」「標準給与額」「給与決定の基準」などを書かなければなりません。
ただ電話番・メールチェックのみしかしていないのに毎月20万円の給与で税金を減らそうとしても、そうも問屋は卸してはくれません。
家族であるからとの特別扱いはできず、他の従業員または従業員を雇うとしたら世間的にはこの程度という相場が基準になってきます。
考え方を変えてみると、専従者に年間500万円の給料を支払っても、それに見合う仕事内容であれば認められる、ということです。
そして、配偶者を「専従者」とすると「配偶者控除」の38万円が適用されなくなります。こちらはよくサラリーマンの源泉徴収で聞かれる言葉ですね。
「扶養内でパート・アルバイトをしても収入から38万円が控除される」というもの。これがなくなるのですから、扶養内で働くとすれば他のご家庭よりも38万円少なく給与を設定しなければ扶養内に収まらないということです。
さらに、「給与の支払」であるので、当然家族であっても給与を出せば「源泉徴収(所得税)」が関わってきます。
これは国税庁の発行している「源泉徴収税額表(月額表)」というものを見ると明らかですが、月額8万8000円以下は源泉徴収されません。
ですので、よほど事業が大きくならない限り、専従者の給与は8万8000円以下が妥当だということです。
扶養内で家族を専従者にするには?
家族を「専従者」にするにあたり必ず頭を悩ませることの一つに「扶養内で」という事があげられます。そもそも「扶養」というのは、生計が一である家族を養っている・生活費を賄っている、ということ。
これは単に世帯主であるからではなく、その収入以外では生活が成り立たないから、ということ。例えば働いていない子供や学生・高齢者・専業主婦、事情により就業できない者などが「扶養内」に入れます。
よくパートされている奥様方から「今年は稼ぎ過ぎたから扶養外れちゃうかも」なんてことを聞きます。これは「ある程度の所得があるのだから、住民税や保険・年金の支払いが可能でしょう」というラインを外れたということ。これによって、所得税はもちろん、健康保険・各種年金を自分で払い、扶養控除が適用されなくなるという事態になります。
もちろん、家族を養えるだけの収入が配偶者じゃなくてもある、という方はそれほど問題にならないかと思います。
しかし実際は103万円や130万円の壁とよく言われる収入では小さな金額ではありません。それどころか、支出が増え手取りが減るといった本末転倒なことになりかねません。
このようなことは「専従者給与」でも起こり得ることです。先に述べた「8万8000円」はあくまでも源泉徴収に関しての金額で、「扶養内」のものとはまた話が変わってきます。
月額8万8000円ですと年間所得は105万6000円となり、この時点で103万円の壁は超えてしまいます。
さらに健康保険の制度が変わり、月額8万8000円以上は国民健康保険・または社会保険に入りましょう、ということになり保険料を支払わなくてはならないかもしれません(こちらは従業員数など適用外の条件がありますので、個人事業主にはさほど影響がないかもしれませんが、今後条件が維持されるとは限らないので)。
青色事業の所得がそれほど大きくないのに専従者の住民税などが増えてしまい結果マイナスだった、ということにならないような給与金額の設定が必要ですね。
「専従者給与」は結果お得なの?
以上のことから、家族に関わる人件費は様々な規定があり、それが認められない場合は経費計上できない、ということがおわかり頂けたかと思います。
「節税」のために「専従者給与」を支払うのであれば、支払うことによりいくら節税できるかを具体的に計算してみると良いでしょう。
逆に青色事業の収入がそれなりにあり長く継続できるものであれば、「専従者給与」を逆手にとって専従者をフルタイム勤務同等にして健康保険・年金を支払い、老後の年金を増やすということも可能になります。
これらのことより、「専従者給与」とは単に「節税」だけではなく後々の生活にも影響してくることがわかります。
目下「節税」をメインにおくか、専従者にも事業主と同等に働いてもらうか、検討価値は大いにあるのではないでしょうか。