【はじめての会社設立】1週間で株式会社をつくるための全手順
「一度きりの人生、どうせなら大きく勝負してみたい」
「起業して、一攫千金を手にしたい」
そんなだいそれた野望をいだいている人のために、株式会社をつくるための全手順を簡単にご紹介します。集中して取り組めば、1週間で株式会社を設立するのも夢ではありません。
新しい会社法によって、資本金の最低金額が撤廃され、資本金実質0円でも株式会社をつくれるようになり、会社設立のハードルは一気に下がりました。これを機会に、独立を考えている人は、自分の株式会社設立を考えてみてはどうでしょうか?
目次
- 1 ホントに会社が必要ですか?
- 1-1 会社にするメリットとは
- 1-2 デメリットも考えておきましょう
- 1-3 分岐点は「売上げ1000万円」「課税所得400万円」
- 2 株式会社設立までの8ステップ
- 2-1 会社の基本事項を決めよう
- 2-2 設立の事前準備をやっておこう
- 2-3 定款を作成しよう
- 2-4 公証役場で定款認証を受けよう
- 2-5 役員(取締役・監査役等)を決めよう
- 2-6 資本金を払い込もう
- 2-7 管轄の法務局で設立登記の申請を行おう
- 2-8 税務署などへ会社設立後の各種法人設立届出を行おう
- 3 株式会社設立にいくらかかるのか?
- 3-1 会社設立に最低限必要な費用は?
- 3-2 資本金は1円でもいいの?
- 3-3 実際のところ、総額どれくらい必要なのか?
- 4 まとめ
1 ホントに会社が必要ですか?
「独立するからには株式会社を立ち上げなきゃ」
「株式会社を設立したら、仕事はうまくいく」
そう考えるのは、ちょっと安易かもしれません。本当に会社を設立することが必要なのか、メリット、デメリットからよく考えてみましょう。
1-1 会社にするメリットとは
まず、株式会社を設立するメリットはどこにあるのでしょうか。いくつか列挙してみます。
- 社会的信用が高くなる
個人事業主とは取引しないという会社も存在します。法人組織のほうが、取引先や仕入れ先から信頼を得やすくなるのはたしかでしょう。
- 節税面でメリットがある
所得が一定水準を超え(年500万円ぐらい)、継続的に増えていく見込みなら、会社組織にしたほうが節税面で有利です。また、経費として認められる範囲も個人事業主より広がります。
- 資金調達の幅が広がる
金融機関などからの融資は、会社のほうが圧倒的に有利です。また、公的融資制度を利用できるなど、資金調達の幅が広がります。
- 相続税がかからない
個人事業の場合は、経営者が亡くなるとすべての資産が相続税の対象になりますが、会社が所有する財産には相続税がかかりません。
- 有限責任でリスクが限定される
個人事業の場合は、借金や税金の滞納などは、自腹を切ってでも返済しなければなりませんが、会社の場合は出資した範囲内に責任が限定されます。つまり、出資金がパーになるかもしれませんが、それで済むということです。ただし、経営者が個人保証をつけていたら、返済の義務を負うことになります。
1-2 デメリットも考えておきましょう
メリットがあるからには、デメリットもあります。デメリットについても考えておく必要があります。どんなデメリットがあるのでしょうか。
- 赤字でも払わなければならない税金がある
会社組織にすると、法人住民税など、たとえ赤字でも払わなければならない税金があります。
- 社会保険に加入しなければならない
会社にすると、健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられます。金額は給与額によって変わってきますが、従業員と会社が折半します。従業員が増えると、会社の負担額も大きくなっていきます。
- 事務負担が増える
会社の会計は、会計法にしたがって処理しなければなりません。個人の確定申告とは比べものにならないくらい複雑になりますし、負担も費用も大きくなります。
1-3 分岐点は「売上げ1000万円」「課税所得400万円」
株式会社を設立したほうがトクになるのはどんな人でしょうか?
まだ確実な売り上げの見込みがない人は、株式会社をつくってもあまりメリットはありません。個人事業としてはじめるのが現実的な選択です。会社組織でなければ仕事がもらえない取引先でないなら、売上げが伸びてから会社をつくることを考えましょう。
では、個人事業と株式会社の分岐点は、どこらへんにあるのでしょうか?
おおまかな目安は、「売上高1000万円」「課税所得400万円」です。この金額を超えるようになると、株式会社を設立して法人化したほうが、手元に残るお金が大きくなる可能性が高くなります。
これくらいの売上げがたつようになり、毎年伸びていくようなら、株式会社の設立を考えてみることをおすすめします。
2 株式会社設立までの8ステップ
それでは、株式会社設立までの手順をご説明しましょう。これを知っていれば、あなたひとりでも株式会社を立ち上げることができます。
また、行政書士や代行業者に頼む場合も、設立の流れを理解していることはとても重要です。
2-1 会社の基本事項を決めよう
手続きをはじめる前にやっておかなければならないのが、「基本事項の決定」です。基本事項として決めなければならないのは、次の8つの項目になります。
- 商号を決める
商号とは、会社の名前のことです。基本的に自由に決められますが、同一住所に同じ商号の会社がある場合は登記できません。
- 事業目的を決める
「どんなことをする」会社か、その目的を明確にしておかなければなりません。事業目的に定められた事業しか行うことができませんから、今はまだできなくても、将来やりたい事業もあげておくといいでしょう。
- 本店所在地を決める
定款をつくるときまでに、会社の本拠地を決めておく必要があります。
- 資本金を決める
資本金は事業の元手となるお金です。最低半年は会社を運転できる資金を用意しておくべきです。
- 出資者を決める
資本金の出資者は、設立後に株主となります。誰から資本金を調達するかによって、事業内容や経営のしかたにも影響が出てきます。
- 機関設計を決める
機関設計とは、会社の意思決定や運営をする仕組みを決めることです。一般的な中小企業では、取締役と株主総会は必ず設置しなければなりません。
- 事業年度を決める
会社には1年ごとに会計の区切りがあります。事業年度の開始月はいつからはじめてもよく、税務上有利な期間をとる場合が多いです。
- 設立費用を準備する
登記や定款の認証に費用がかかります。どれくらいかかるかはこの後で解説しますが、設立にかかる費用も準備しておく必要があります。
2-2 設立の事前準備をやっておこう
基本事項が決まれば、必要な書類も決まってきます。書類提出のための事前準備をしておきましょう。次の4つの準備をしておきます。
- 類似の商号を調査する
基本事項で決めた商号と類似するものが同一住所にないか調べておきます。本店所在地を管轄する法務局で「商号調査簿」を閲覧して確認します。
- 会社代表印(法人実印)を準備する
設立登記や定款の承認の際に、会社の代表印が必要になります。印鑑の作成には時間がかかる場合があるので、商号の調査が終わったら、早めに作成しておくといいでしょう。
- 発起人および役員の印鑑証明を取得する
発起人および取締役に就任する人の実印の印鑑証明が必要になります。役所で簡単に取得できますが、有効期限は3カ月であることをお忘れなく。
- 事業目的を事前確認する
登記申請の前に、事業目的な登記可能か、管轄法務局で確認しておきます。許認可業種(建設業、介護事業、人材派遣、飲食業、宅建業など)によって必要事項が異なりますから、法務局の相談窓口で確認します。
2-3 定款を作成しよう
基本事項を決定し、事前準備が終われば、いよいよ「定款」の作成と認証です。
定款とは、会社の目的や組織、根本的な規則などを定めた、いわば「会社の憲法」のようなものです。
定款に必ず載せなければいけない「絶対的記載事項」は以下のとおりです。
- 商号
- 事業目的
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額と設立後の資本金の額
- 発起人の氏名・住所
- 発行可能株式総数
この他、会社の基本ルールを記載しておきます。
2-4 公証役場で定款認証を受けよう
定款を作成したら、それが正しく作成されたものであることを証明するために、第三者の認証を受けなければなりません。管轄法務局か、本店のある都道府県の公証役場で定款を認証してもらいます。
2-5 役員(取締役・監査役等)を決めよう
基本事項で機関構成は決まっていますから、代表取締役、取締役、監査役などの役員を決めます。取締役は1名以上いれば人数制限はなく、代表取締役を複数おくことも可能です。誰が役員になるのか決まったら、就任承諾書をつくり、設立登記申請時に提出します。
2-6 資本金を払い込もう
出資者は、発起人代表者の個人口座に出資金を払い込みます。この払い込みの合計が設立時の資本金となります。出資金が払い込まれたら、発起人代表者は払い込みがあった旨を記載した書面と預金通帳の写し「払込証明書」を作成します。
また、現物出資(金銭以外の出資)がある場合は、それが正当に評価されているか検査を受けなければなりませんが、一定金額以下の場合は免除されます。中小企業の場合、免除となることが多いようです。
2-7 管轄の法務局で設立登記の申請を行おう
定款が認証され、資本金の払い込みができたら、いよいよ設立登記の申請です。株式会社の設立登記申請は、会社の代表者が会社の本店所在地を管轄する登記所において行います。
登記に必要な書類は次のとおりです。
- 定款
- 資本金の払込証明書
- 発起人の決定書
- 設立時役員の就任承諾書
- 役員全員の印鑑証明書
- 登録免許税貼付け台紙
- 登記すべき事項を記した申請用紙または内容を保存したCD-R等
株式会社の設立登記申請書に、これらの書類を添付して提出することになります。
また、登記が済むと会社の代表印を登録しますので、あらかじめつくった代表印の印鑑届出書も用意しておきます。
登記の方法は、実際に法務局に出向いて行う他、郵送で行う方法、オンラインで行う方法があります。
2-8 税務署などへ会社設立後の各種法人設立届出を行おう
これで設立登記は終わりました。しかし、まだ完了ではありません。税務署や労働基準監督署、各都道府県などに各種届出をしなくてはならないのです。
- 税務関係の届出
会社が活動をはじめると、国に法人税を払わなくてはいけませんから、税務署に各種の届出書を提出する必要があります。
また、地方自治体には法人事業税と法人住民税を納付しますから、都道府県税事務所と市区町村役場の双方に法人設立届出書を提出します。
- 社会保険関係・労働保険関係の届出を行う
株式会社は社会保険の加入が義務付けられているので、社会保険事務所に届出をしなければなりません。また、労働者をひとりでも雇った場合は、労働保険の納付義務が発生しますから、労働基準監督署と公共職業安定書等に書類を提出することになります。
こうした各種の届出が終わって、はじめて株式会社としての活動を行うことができるようになります。
どうですか、手続きが煩雑で「無理!」と思いましたか? そういう人は司法書士などの専門家や代行業者に頼むのも手です。また、税務面の整備はとても重要なので、信頼できる税理士に相談することをおすすめします。
3 株式会社設立にいくらかかるのか?
株式会社をつくるのに、どれくらいの費用が必要なの? そこのところを知りたい方も多いことでしょう。
実際にどれくらいかかるのか。詳しく見ていきましょう。
3-1 会社設立に最低限必要な費用は?
まず、設立登記にかかる費用から見ていきましょう。
必要な費用の内訳は次のようになります。
- 定款に貼る収入印紙代 4万円
- 定款の認証手数料 5万円
- 定款の謄本手数料 約2000円
- 登記の際の登録免許税 15万円
したがって、自分で設立登記すると、約25万円程度の費用がかかることになります。「定款に貼る収入印紙代」は電子定款にするとかかりません。ただし、特殊なソフトウェアや器材が必要となります。
代行業者等に頼むと、これに代行手数料等が加わりますから、さらに費用がかさむことになります。しかし、その分、時間と労力を節約することができます。どちらがいいかは、あなたの考え方しだいです。
3-2 資本金は1円でもいいの?
以前は、株式会社の最低資本金は1000万円と定められていましたが、新しい会社法によってその制限は撤廃されました。よって、理論上は資本金が1円でも株式会社の設立は可能です。
しかし、「資本金がいらないなら、とりあえず株式会社つくっちゃお」と考えるのはいささか早計です。
設立時の資本金は、会社の運転資金となるものです。これが1円しかなければ、仕入れはどうするのでしょうか。給料はどこから払えばいいのでしょうか。
また、「資本金1円」では社会的信用を得ることはむずかしいでしょう。「資本金が1円しかない会社と取引はできない」と考えるところも出てくるはずです。
1円の資本金で会社を設立することは可能ですが、現実問題としてメリットよりもデメリットのほうが大きいといわざるをえません。
資本金は、最低でも会社が半年間は営業を継続できるくらいの金額を準備しておいたほうがいいといわれています。それくらいの期間があれば、売上げがあがるようになってきて、ビジネスが回るようになるからです。
3-3 実際のところ、総額どれくらい必要なのか?
資本金、登記費用のほかに、会社設立時は、事務所の契約費や印鑑、パソコンなどの購入費用、ホームページ作成費用などの資金も必要です。
では、実際のところ総額いくらぐらい必要なのでしょうか?
総務省の統計によると、起業資金500万円というのがもっとも多いパターンだといいます。その内訳は……。
- 資本金:平均300万円
- 登記費用:約25万円
- その他の諸費用:150~180万円
これはあくまで統計上の数字で、実際にはさまざまなケースがあると思いますが、ひとつのモデルとして参考になるのではないでしょうか、
4 まとめ
いかがでしたでしょうか?
これが、1週間で株式会社を設立するための全手順です。かなり手間ヒマかかりそうですが、会社を立ち上げてビジネスを興していくわけですから、これくらいの面倒は引き受けなくてはいけないのでしょうね。
でも、株式会社を立ち上げることがゴールではありません。ここからがスタート、本当の勝負はこれからです。自分で会社をつくって勝負をしようと思っている人は、そのことだけは忘れないでくださいね。